8月初旬のある日、山道を通ると何台かの軽トラックが停まっていました。
きのこ採りの季節には早いけれど?と不思議に思って声をかけると、『ヘボ獲り』の真っ最中。
中野方町を含む一部地域で「へぼ」と呼ばれる「クロスズメバチ」は、昔からこの地方では食用とされていました。クロスズメバチの巣を探して持ち帰り、家で巣を大きく育てて秋に幼虫を食べる。これを季節の楽しみとする人々にとって、夏の『ヘボ獲り』は大事な作業です。
まずは、エサ(生のイカ)に寄ってきたクロスズメバチを捕まえ、コヨリをつけたエサに噛みつかせます。
小さいとはいえ、スズメバチを手に乗せるとは...と嫌な顔をしたら、「餌を採っとる時は一番安全な時、絶対に刺されない」そう。
このクロスズメバチが餌を巣に持ち帰るところを、コヨリを目印に追いかけて巣の場所を探し、土の中にある巣を掘り出すのですが、目印を付けたクロスズメバチを林の中で追いかけるのは大変です。目を離すとすぐに見失ってしまいます。
こんな木々の間を飛んでいったら、どこに行ったかさっぱりわからず。
そのため、『ヘボ獲り』は団体戦で行うのが普通だそう。よく見ると林の中には
60代~80代の「ヘボ仲間」で今回は探していたそうですが、一番奥にいるのは、杖を突いている80代半ばのおじいちゃん。足が悪くても林の中を歩き回りたくなるくらい、『ヘボ』はごちそうなのですね。
仕掛けたエサに飛んでくるクロスズメバチは、何カ所か別の巣から飛んでくることも。
そのため、蜂には最初に色を付けて仕分けがされています。
エサつけ担当のおじさんが「おい行くぞ!ピンクや!」と叫ぶと、みんなで右方向を見る。「青や!」と叫ぶと林の奥を見る。そんなやり取りが、何時間も続けられていました。
こんな暑い時期にやらなくても...と思ったら、夏は蜂が餌を採りに行く範囲が狭まるから巣を探しやすいのだそうです。
この日は巣の場所は見つからずでしたが、「また明日!」と約束をして帰る姿、「あっちだ!」「こっちや!」と蜂を追いかける様子、「食べるのもいいけど、探すのが楽しいんだよなー」と話す笑顔は、虫取り網を持ってセミを追いかける保育園児と全く同じです。
後日、発見された巣は掘って持ち帰り巣箱に入れ、ご自宅の裏山に設置されていました。
元気に蜂が出入りする様子も見られます。
10月まで無事に働きバチが増えれば、大きな蜂の巣に育ち、美味しいへぼ飯となるはずです。
中野方町のおじさんたちが少年のようになる季節、暑い夏が終わっても、中野方町に住む人にとって山や林は生活の一部。山菜・キノコ・木の手入れなど、季節を一番感じられる場所かもしれません。
へぼの巣箱の横には当たり前のように椎茸の原木も並んでいますしね。
9月の山のお楽しみは栗拾い!
個人所有の森や林に入るのはご法度ですが、中野方にはえな笠置山栗園があります。
9月22日には収穫祭が開催されますので、是非、ご参加ください。
中野方町の元気なおじさん・おじいちゃんにも出会えますよ。